ミャンマー 環境管理

ミャンマーは、東南アジアでも最も経済発展が遅れている国の一つでありますが、同国は元来、資源の豊富な資源国であり、軍政から民政への移管、あるいは経済開放政策といった最近の変化により、投資の対象国として世界から注目を集めてはじめています。同時に、6000万人ともいわれる人口規模は、インドネシアやフィリピン、タイ、ベトナムといった国々には及ばないものの、将来有望な市場でもあります。

環境問題をみると、同国は依然として工業化の初期段階にあることから、公害問題は他のアジア諸国ほど深刻なレベルには達していません。しかし、最大都市ヤンゴンや第二の都市マンダレーといった都市部では、水質汚染や大気汚染、不適切な廃棄物管理といった問題が顕在化してきており、今後の工業化、都市化および経済発展により、これらの問題はさらに深刻になることが予想されます。現在、同国は資金、人材、あるいは技術といった点で、様々な環境問題に対処するために十分なリソースを有しているとはいえないかもしれませんが、国際機関や日本を含む先進国も支援を活発化させており、政府はこれらのリソースを使って公害対策を急いでいます。

ミャンマーの環境・労働安全衛生に係る法規制

ミャンマーでは、主に以下の法律によって環境・労働安全衛生に係る要求が規定されています。

法律名称 概要
環境保全法(連邦議会法律2012年第9号) 2012年に制定された、同国初の包括的な環境基本法。ミャンマーで唯一かつ初めての環境保護に特化した法律であり、水質汚染や大気汚染、廃棄物管理、有害物質管理、騒音、振動など様々な公害問題を包括的にカバーするための法的基盤。所管官庁は、環境保全林業省。2014年には、下位法令として環境保全規則を公布。
工場法(法律1951年第65号) 職場の労働安全衛生や環境汚染防止等を規定する法律。環境関連として、廃棄物の処理処分のために適切な措置をとるよう要求(第14条)。また、ばい煙や蒸気、ガスの大量発生を防ぐことで大気および屋内空気質を管理することについても規定(第16条)。
化学品および関連物質による危害の予防に関する法律(連邦議会法律2013年第28号) 2013年に制定された化学物質管理のための法律。本法の目的は、(1)環境保護、(2)事業における許認可制度の運用、(3)情報収集、訓練および研究、(4)労働安全衛生の4点。化学品および関連物質に関する事業(製造、輸入、輸出等)を営む者は、ライセンスの取得や化学品の登録が必要。2016年には、下位法令として化学品および関連物質による危害の予防に関する規則を公布。
労働安全衛生法(連邦議会法律2019年第8号) 労働者の安全のために使用者および労働者の責任を規定。適用対象はミャンマー国内に存在する国内および外国資本の企業、合弁会社、政府機関、団体であり、対象業種には鉱工業、建設業、小売業、サービス業(ホスピタリティ産業を含む)等が含まれる。
外国投資法(連邦議会法律2012年第21号) 投資を規制する法律で、環境保全に焦点を当てたものではないが、日本企業がミャンマーに進出する際に考慮すべき重要な法律の一つである。環境の観点からみると、本法は、投資家の義務として「投資に係る既存の法律に従い、環境汚染あるいは損害が発生しないよう事業を行うこと」と規定している(外国投資法第17条)、また同国では本法に基づいて環境影響評価を義務付ける事業リストが公表されており、当該リストに掲載される事業を行う者は、事前に環境影響評価を行わなければならない。
工業団地法(連邦議会法律2020年第7号) 国内全土約60カ所の工業団地の持続可能な発展を目的として制定。環境面では廃棄物処理の責任について規定しており、当該工業団地が廃棄物の収集システムを整備できていない場合には、自らで適切に処理処分しなければならない。投資家は、工業団地が実施した環境影響評価に適合するように事業を行わなければならない。

 

弊社サービスについて

GBPでは、ミャンマーに工場を有する製造業のお客様、これからミャンマーに進出するお客様に現地の環境・労働安全衛生コンプライアンスおよびリスクマネジメントのためのサポートおよびコンサルティングを提供しています。ミャンマー現地の環境コンサルティング企業(提携パートナー)ともに、以下のサービスを提供しております。

  • ミャンマー現地の環境、労働安全衛生に関する法規制調査およびコンサルティング
  • 簡易環境影響評価(IEE:Initial Environmental Examination)、環境影響評価(EIA:Environmental Impact Assessment)、環境管理計画(EMP:Environmental Management Plan)の実施
  • 土壌汚染および地下水汚染の調査
  • 排水や大気、排ガスの測定、分析、モニタリング
  • 化学品の輸出入に関する法規制調査およびコンサルティング

サービス内容や料金については、お客様のご要望をベースにご提案・お見積となります。
お見積りは無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。

 

環境管理計画(EMP:Environmental Management Plan)について

ミャンマー天然資源環境保全省は、2018年1月10日付で、9業種に対して環境管理計画(EMP:Environmental Management Plan)を策定、同省に提出して承認を得るよう求める通知を発行しました。対象となる9業種は、以下の事業です。

No. 

工業、工場

事業種

規模

1

アルコール、ワイン、ビール製造業(Alcohol, Wine and Beer Production  Factories )

一日当たりの製造量5万リットル以上 

2

食品・飲料製造業 (Food and Beverage Processing Facilities)

一日当たりの製造量10トン以上 

3

農薬製造、製薬及び包装工場 (Pesticide Manufacturing, Formulation and Packaging Plants)

全ての規模

4

セメント及び石灰製造業 (Cement and Lime Manufacturing) 

セメント一時間当たり10トン以上

石灰一日当たり20トン以上

5

 

繊維及び染色業 (Textile and Dyeing Facilities)

(1) クリーニング、漂白、シルケット化 または 繊維及び 染色業 (Pre-treatment (Washing, Bleaching, Mercerization) or Dyeing of Textiles or Fibers)               

一日当たり1トン以上

6

鋳造業 (Foundry Industry)

(1) 非金属溶解及び精錬工場 (Base Metal Smelting and Refining Plant)

(2) 鉄鉱石又は金属くずから銑鉄や、原料や低合金鋼の製造 (Manufacture of Pig Iron, Raw and Low Alloy Steel from Iron Ore or Scrap Metal)

(3) 鋳造業   (Foundry)

(4) 非鉄金属の溶融、鍛冶、線条細工 (Non-Ferrous Metal Melting, Smithy and Filigree)

 

全規模

全規模

全規模

一日当たりの製造量5トン以上

7

なめし皮工業(Tanning and Leather Finishing)  

全規模

8

パルプ及び製紙業(Pulp and Paper Mill)  

一日当たりのパルプ製造量20トン以上

9

砂糖製造業(Sugar Manufacturing Plant)     

一日当たりの精製済砂糖の製造量50トン以上

 

また、EMPには以下の事項をまとめる必要があります。同省環境保全局(ECD:Environmetnal Conservation Department)は、以下の指定フォーマットを定めています。

 

報告書の構成

主な内容

略語表及び用語解説

  • 報告書に使用している略語についての説明
  • 特定分野/技術に関する専門用語の解説

1. 報告概要(英/ミャンマー)

報告書を英語で作成した場合概要はミャンマー語で作成すること。

  • 事業概要
  • 事業の環境面及び社会環境面に関する概要
  • 事業活動で排出される、環境汚染に影響を及ぼす主たる物質等や(必要であれば関係のある廃棄物等)環境負荷を減らす対策、モニタリングおよび管理計画等の概要
  • 地元住民との協議に関する概要
  • 環境と社会に関する管理計画等の概要 

2. 基本情報および事業者の情報

  • 事業の背景データや現在稼働している技術、経済、環境、社会に関する研究により取得したデータ等
  • 事業主/組織の情報[名前、住所、組織、連絡先、ファクス、メール、ウェブサイト等を含め、必要なデータ等とEMP提出日付]
  • 投資の情報等[業種、投資率、出資者等]
  • EMP作成者/組織の情報等

3. 基準、法令等及び設立経緯に関する情報

  • 事業の環境方針及び設立経緯に関する情報等
  • ミャンマー共和国の基準、法令、組織に関する事業において、遵守すべき法律、法令、施行令等、環境規定、基準等
  • 国際ルールや制約、国際的な方針、規定、基準、ルール等

4.事業内容/計画

  • 事業内容と目的
  • 事業所在地と土地面積(GISもしくは座標をつかって正確に記述された地図を含む)
  • 設立および操業開始時期
  • 製造工場や関連する建物等の情報(配置図、案内図を含む)
  • 使用する化学物質を含む原材料等の納入方法や使用、保管の状況
  • 製造工程及び方式、技術等(製造業各工程段階を明確に分かるようにチャート等で示して表示すること)
  • 使用する機械及び設備のリスト
  • 合計/事業の工程毎あるいは勤務体系毎の工員人数及び労働時間
  • 年間稼働日数
  • 製品(Product)及び副産物類(By-product)の生産量[日別/月別/年別生産量]
  • 年間の水消費量及び水源
  • 年間電力消費量及び配電、受電状況
  • 廃棄物(固体、液体、気体)管理の概要、廃棄物排出状況及び廃棄物処理方法(事業工程を明確に示したチャートなどで表示すること)
  • 排ガスと粉塵等の管理システム
  • 固形廃棄物排出量、種類と管理方法
  • 排液(Effluent)/排水(Wastewater)の排出量及び管理方法
  • 危険廃棄物の分類別排出量及び管理方法
  • 雨水(Storm Water)及び下水(Drainage System)の状況

5. 現在の自然環境及び社会環境状況

  • 現在の環境データ及び必要な二次データ等
  • 調査地区周辺の地理情報等(GIS技術もしくは他の技術を用いた地図や表示等)
  • 地域ごとの天気/気候/地形に関わる地理データ等
  • 土地の利用状況
  • 地質データ
  • 地表水及び地下水の水質
  • 大気質[粉塵、気体、業種ごとで重要なパラメータ等や他に必要なパラメータ等の状況]
  • 臭気
  • 騒音および振動
  • 周辺の社会環境に関する状況
  • 社会に関する情報
  • 経済に関する情報
  • 文化遺産に関する情報

6.環境対策

  • 工場/工業の事業の製造工程段階別の、水源、大気、土壌に影響を及ぼす汚染物質(Pollutants)/有害物質(Hazardous Substances)/廃棄物(Wastes)及び副産物等の情報
  • 排出される汚染物質/有害物質/廃棄物及び副産物等が自然環境及び社会環境に危害を及ぼす影響の評価。過去と現在の事業によって将来に及ぼす影響
  • 上記の評価をもとに検討した影響緩和施策/技術等の対策

7.地元住民との協議及び開発計画 

  • 住民と協議して合意した条件等
  • 現在の状況において影響を受けている地元住民、自治体、NGO等と協議し、工場により生じる悪影響及び負荷軽減対策について必要に応じて説明すること。[協議回数、場所、時期、参加組織と人数等/大勢の住民と話し合い/情報開示(Disclosure)を必要に応じて予定時期を示すこと]
  • 地元住民との協議の結果等
  • 影響を受ける地元住民、自治体、NGO等の意見、要求、対応結果状況、今後の対応計画
  • 影響を受ける地元住民のため地域開発計画及び予算

8.環境及び社会に関する管理計画

  • 環境及び社会に関する管理計画を実施するための組織や業務計画等。
  • ルールを遵守のための監督/報告体制
  • 起こりうる環境及び社会に関わる影響予測
  • 影響を縮小するために行う事業計画
  • 職場/コミュニティの健康保険計画
  • 緊急時の対応計画、予防状況、訓練や研修計画
  • 環境モニタリングの基準、方法、予定、実施場所、回数、研究データ等 
  • 地元住民との連携
  • 能力開発及び、研修計画、組織と予算の計画

9. 結論

  • 環境及び社会への影響が最小化されるよう対策を示すこと。

 

EMPの作成には専門知識が必要であるため、専門家が作成する必要があります。GBPでは、ミャンマー現地の環境コンサルティング企業(提携パートナー)ともに、EMPの作成を提供しております。

サービス内容や料金については、お客様のご要望をベースにご提案・お見積となります。
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